川柳さくらぎ推薦句
 

                                   

第18・19号推薦句
ニンゲンをみんな知ってる笑い皺
気が向くとゆるゆる回るエコ風車
ひと幕をあけるかどうかのぞき窓 
まだ春の遠い地が割け海が裂け
心の動線に厚着して生きる
旅疲れさせてもらえる果報者
座ったら夕日が落ちる音がする


川辺 大柳
磯野 純子
森下 みえ
ヴォイス
川那部つぼみ
久保昭二
荒瀬 ま喜

第17号推薦句
コロリコロリ啼かない蝉が乾いてる
世渡りが下手で庭先花ざかり 
忘れもの二つで家族できました 
イヤリング片割ればかり自己主張 
はねかえる言葉をまとい明日へ向く
人間も茸も見分け難しい
指切りの明日はないかも 今日の宿 


荒木いつか
森下みえ
糸野こまり
礒野純子
川那辺つぼみ
堀 節子
福里ふくよ

第16号推薦句
見飽きない景色があれば生きられる
帽子買う似合った顔は売ってない 
盆近い友と会う日のキュウリ ナス 
礼金も要らず銀座に住むカラス 
占い師自分を欺まし客騙す 
つまらないジョークで消した導火線 


福里ふくよ
後藤けんじ
中村よし胡
永井 天晴
羽崎 孝治
川辺 大柳

第15号推薦句
不器用に命まるごと抱いて母 
イケメンも俺もおんなじ頭蓋骨 
つぎはぎの鞠が暗闇抜ける音 
かあさんは哭いていない駱駝の目 
今日ひと日 等身大の風の音 
仄暗(くら)い所 自惚れ鏡置いて在る 
煮はじめの灰汁もおいしい仲となる 


川辺 大柳
後藤けんじ
川那部つぼみ
磯野 純子
荒瀬 ま喜
荒木いつか
糸野こまり

第14号推薦句
放たれた言葉の輪郭を二度なぞるみ
手違いは落ちると決めた生玉子 
今日もまた川の字なりに寝て独り
ククリでは切り捨てられぬ人の欲 
コントコント コトンと妻が家を出る
ハーモニカ四月の穴に口あわせ
竜馬には「新党ひとり」似合いそう 


川那部つぼみ
羽崎 孝治
ヴォイス
寺森 眸
北埜 郷柳
荒瀬 ま喜
吉田 国夫

第12号推薦句
<縦の詩>
逃げ道から入場する二階席   
無添加の人が酢っぱくなっちゃった 
コンビニの棚で贖う辞書聖書  
夕やけを闇に浸して洗う月  
生涯を苦労しらずの土踏まず  
タネ銭に音符をつける茄子の花  
<横の詩>
優しさの引き出し開けて母介護  
女偏稀に嬉しい字も混ざる  
ひとり言 折り目正しく鶴を折る  
大根の抜いた後には虚脱感   
人生の雑用係買って出る 
酉の市ケバブ プルコギ 切山椒  
暮れなずむ我が身ひとつをもてあまし 



青山 南
糸野こまり
北埜 郷柳
斎藤ふじお
兼本 國相
荒瀬 ま喜

渡辺 好文
高斎ゆみこ
尾川 柳蔵
齊木美佐緒
小田 由実
吉澤 宏
本田 玉江

第11号推薦句
<縦の詩>
多目的ホール私は不器用で   
Uターン予報 となりの列に付く  
かさぶたが剥がれては呼び鈴が鳴る   
痛いとか痒いとかなら生きている  
一万歩あるく口かな 飴ひとつ  
<横の詩>
カワイイと言われ弾けたプチトマト  
ネットカフェ行き場失う砂埃  
不細工な野菜と避暑地から帰宅  
ネットなら括弧で終わる泣き笑い   
婆さんの元気の素は心太  
増えていた空き家と墓とおばあさん 



平岡 雪 
船木 千夢
平岡 雪
染谷さくら
荒瀬 ま喜

高斎ゆみこ
齊木美佐緒
川那部つぼみ
糸野こまり
渡辺 好文
森下 みえ

第10号推薦句
<縦の詩>
新しいシャツを卑屈が着て笑う  
出征の兵士のような古テレビ  
十分に甘やかされて無愛想
落ちるなら孤独に 手と手なら踊る
古傷をパッチワークがしゃべりだす
<横の詩>
人質に胃袋を取る母の乱
メール風絵文字で栓をする弱気
手も足も出せぬ彼氏の顔が好き
ボトルの名 ちょいと演歌の香りする
おしゃべりな受話器墓石の叩き売り
〈ワケあり〉の値札 ワケだけ知りたがり 
控え目な金魚にとどくこぼれ餌



小田 由実
渡辺 好文
平岡  雪
船木 千夢
高斎ゆみこ

染谷 さくら
船木 千夢
平岡  雪
糸野こまり
高斎ゆみこ
小沼 一拝
荒瀬 ま喜

 川柳には、作者個人の主観的表現をベースとする
「縦の詩」と共感をベースとする「横の詩」がある。
 同じモノサシでは評価しにくく、前者を〈推薦1〉、後者を〈推薦2〉として掲げることにする。

第9号推薦句
言い訳は明日発売いたします   
以下同文からも生えてきた新芽  
棚の上面倒ばかり乗せてある   
我儘な毎日 顔を塗ってます   
過去に つけてる私じゃない私  
一杯のコーヒー家が広過ぎる   
ヘアカラー 塗り潰してく白い旗


吉田 国夫
青山  南
斎木美佐緒
平岡  雪
川那部つぼみ
高斎ゆみこ
船木 千夢

第8号推薦句
かつて見た母と同じ舟を漕ぐ 
三猿のどこか笑って鶴を折り 
啓蟄をヤレヤレ越える老いと蜘蛛 
厄介なトワレを着ける暇潰し  
カミサマの死角で味噌が湯気をたて 
耳打ちを餌にしているコンセント 
ジョーズでもやさしく泳ぐ日が多い


染谷 さくら
尾川 柳蔵
高斎ゆみこ
平岡  雪
朝比奈千鶴
船木 千夢
糸野こまり

第7号推薦句
健康と不幸と不孝レジに出す 
無造作にパンを与える処方箋  
しんしんと煮凝りを喰う派遣村 
花の名も定かならずに朽ちる鉢 
導火線じりじり燃えて良い子なり  
星空を食べてスリムになる女   
宝くじ夜空に蒼い猫の爪   
切なさもさっと湯掻いて明日に発つ 


平井ヒロユキ
斎藤冨士男
渡辺 好文
小沼 一拝
平岡  雪
斎藤 光子
ヴォイス
船木 千夢

第6号推薦句
はぐれてたアリス デイサービスにいた 
熱湯に飛び込む茄子の潔さ   
とろとろと机上に零すボクの核 
眼科医の小さな文字の注意書き 
レントゲン骨の密度に出汁が出る 
月は月 術後の眼まずは月     
寄り添ってころがっている古電池
朽ちた人語る重たい楷書です


橋本 祐子
小田 由実
ヴォイス
渡辺 好文
荒瀬喜代子
西村  泰
船木千夢
牧内ヨシ江

第5号推薦句
狂ってもいいか 残りの鶴を折る
新聞のレシピ切り抜くだけの妻 
こぼれやすい二代目の掌
(たなごころ)    
漁火が消える おんなの灯が消える
生き方の厭
(や)な面を知る靴の減り
ロボットの歩幅に合わす訪問者
代償の花粉が重い朝の鉢
天国の近道を行く鮎の味


尾川 柳蔵
野村 碧海
北埜 郷柳
斎藤 光子
牧内ヨシ江
斎木美佐緒
高斎ゆみこ
中村よし胡

第4号推薦句
コンビニで表紙の恋を素通りす
ホシゾラを跨いできたな白い脚  
ちくちくとハート縫います仕付け糸 
爪に咲くヒマワリ消している晩夏
2チャンネル人の噂も数時間  
人並みのオトナになるという手品
忙しい閻魔鰻の舌も抜く


平岡  雪
平井ヒロユキ
小田 由美
斎藤 光子
染谷さくら
船木千夢
牧内ヨシ江

第3号推薦句
ラベンダー畑にエゴを寝かせてる  
生き様を問う血液の頬被り     
犬の忌をふと思い出す花筏     
内政も五輪も具なり北京鍋     
おとぼけも上手になった石地蔵      
わたし発 着メロのないメッセージ 
老いの背に老いを背負わせる処方箋 
鼻をかみ一人芝居の幕を引く    


斎藤 光子
牧内ヨシ江
朝比奈千鶴
染谷さくら
青山  南
船木 千夢
高斎ゆみこ
平岡  雪

第2号推薦句
放たれた時間 老後という荒野   
バラのない花屋でバラを買いたがり 
コンビニで季節を掬う雛あられ   
脳味噌につるんとひとつコッペパン 
ケイタイに着替えをしないメール来る 
田舎にも都会にもある蟻の道    
全パーツ愛される為 このかたち 
 


朝比奈千鶴
斎藤 光子
斎木美佐緒
小田 由実
牧内ヨシ江
船木 千夢
平岡  雪

第1号推薦句
場違いも座布団一枚分の縁     
能面が起き出して来る鬱の朝    
一日のノルマを注ぐマグカップ   
板ガムのような会話を弄ぶ     
夕焼けにまどろむユンボ 恋を抱く 
花芯には触れない距離で聞くおだて 
呟きで満タンになる壁の耳  
   


船木 千夢
尾川 柳蔵
斎木美佐緒
平岡  雪
小田 由実
朝比奈千鶴
牧内ヨシ江

                   

 

inserted by FC2 system