選考経過
橋本祐子氏は、雑詠を二部門に分ける前の第6号から創作欄に顔を見せたが、その1回目の投句から推薦句として挙げられる実力者。それもそのはず、「さくらぎ」生え抜きの作家がまだ3年〜4年という経験に対し、橋本祐子氏は、すでに大野風柳主幹の「柳都」で受賞暦のあるベテランだった。ある意味、当然の受賞ということも言えるだろうが、一年を通じて作句に手を抜くことなく、個性ある作品を生み続けたことが最大の評価ポイントであり、またよき誌上の手本にもなった。
投句数は、20章に満たないことがあり、総掲載句数では、牧内ヨシ江氏、平井ヒロユキ氏に及ばなかったが、一句一句のアピール度に関しては、やや水をあけている感がある。俗にいう現代川柳的なコトバが先行した表現ではなく、しっかりと作者の〈目〉を通して描く現代社会や作者周辺の事象が、強くイメージとして描かれていてる。
準賞は、昨年の新人賞を獲得した牧内ヨシ江氏。ほか、平井ヒロユキ氏、齋藤光子氏、平岡雪氏、高斎ゆみこ氏、船木千夢氏が候補としてあがった。さらに、7〜12号の全回投稿者を対象に《玉の緒集》から〈新人賞〉として平岡雪氏を決定した。
受賞者以外の候補の句を挙げて、称えたい。
煮え切らぬ豆が照れてるふきこぼれ ヨシ江
遠き日は縄のリズムで粥すする ヒロユキ
真っ白なマスクをかけるスケジュール 光 子
女偏稀に嬉しい字も混ざる ゆみこ
ヘアカラー塗りつぶしてく白い旗 千 夢 |