川柳 さくらぎ 表彰

 

  第1回 さくらぎ賞 (2009年度)



橋本 祐子

春はどこから ハンドルのあそびから(7号)
立場とか引き際だとか紙の皿    
(8号)
絆しがらみコンニャクの裏表     
(10号)
現実を飲めば砂漠になってゆく   
(11号)
冷蔵庫いっぱいにして夕焼ける  
 (12号)


  受賞のことば       橋本祐子

 一泉さんの評価をいただき本当に嬉しいです。川柳は、選者と作句者のコラボだと思います。この選者にぶつけたいと思うとき、自意識の外からもやもやと輪郭を形成しながら、私が立ち上がってきます。その快感に引っ張られて川柳を続けています。これからも川柳と柳友の傍らに居場所を持って楽しんでゆきたいと思っています。
 ありがとうございました。

  選考経過
 橋本祐子氏は、雑詠を二部門に分ける前の第6号から創作欄に顔を見せたが、その1回目の投句から推薦句として挙げられる実力者。それもそのはず、「さくらぎ」生え抜きの作家がまだ3年〜4年という経験に対し、橋本祐子氏は、すでに大野風柳主幹の「柳都」で受賞暦のあるベテランだった。ある意味、当然の受賞ということも言えるだろうが、一年を通じて作句に手を抜くことなく、個性ある作品を生み続けたことが最大の評価ポイントであり、またよき誌上の手本にもなった。
 投句数は、20章に満たないことがあり、総掲載句数では、牧内ヨシ江氏、平井ヒロユキ氏に及ばなかったが、一句一句のアピール度に関しては、やや水をあけている感がある。俗にいう現代川柳的なコトバが先行した表現ではなく、しっかりと作者の〈目〉を通して描く現代社会や作者周辺の事象が、強くイメージとして描かれていてる。
 準賞は、昨年の新人賞を獲得した牧内ヨシ江氏。ほか、平井ヒロユキ氏、齋藤光子氏、平岡雪氏、高斎ゆみこ氏、船木千夢氏が候補としてあがった。さらに、7〜12号の全回投稿者を対象に《玉の緒集》から〈新人賞〉として平岡雪氏を決定した。
 受賞者以外の候補の句を挙げて、称えたい。
  煮え切らぬ豆が照れてるふきこぼれ   ヨシ江
  遠き日は縄のリズムで粥すする      ヒロユキ
  真っ白なマスクをかけるスケジュール   光 子
  女偏稀に嬉しい字も混ざる         ゆみこ
  ヘアカラー塗りつぶしてく白い旗      千 夢

  第1回 新人賞 (2008年度)



牧内 ヨシ江

呟きで満タンになる壁の耳
ケイタイに着替えをしないメール来る
生き様を問う血液の頬被り
忙しい閻魔鰻の舌も抜く
生き方の厭(や)な面を知る靴の減り
朽ちた人語る重たい楷書です

  受賞あいさつ       牧内ヨシ江
 川柳との出合いから二年、新人賞は、突然にやってきた。やっぱり嬉しい。大殺界明けの今年だから…。
 「さくらぎ」の賞。古稀になって〈新人〉とはありがたい。
 よき師匠を戴いて、少しは箸に引っ掛る位の句ができるまでの進歩を認めていただいたこと感謝いたします。次は、棒にも掛かるようになれますよう前へ上へと弛まず行きます。
 それには、まず楽しさが必要です。〈ちゃんこ〉の仲間に恵まれ、刺激されながらの楽しさは別格。また、師の元で濃い餌で養殖されているような環境は、何とも勿体無い。
 私の次の課題は、川柳という楽しい文芸を次の世代へと伝えていくこと。最初のターゲットを孫に向け、導いてみたいと思っている。

  選考経過
 ヨシ江さんは、川柳250年の年の1月に始まった読売日本テレビ文化センター錦糸町教室の一期生で、「さくらぎ」創刊から参加。わずか柳歴は2年ですが、人生から醸し出す句には、着実に自らの思いが乗せられてきています。一句勝負では、他にも良い作者が存在し、佳作も含めた評価では近差ですが、6回すべて毎号の推薦句に名を連ね、総合力としての安定感を見せました。
 準賞は、推薦5回の船木千夢さん。推薦4回に、平岡雪さん、小田由実さん、斎藤光子さんらが続き、それぞれ活躍をみせました。
  場違いも座布団一枚分の縁      千夢
  板ガムのような会話を弄ぶ        雪
  脳味噌につるんとひとつコッペパン   由実
  爪に咲くヒマワリ消している晩夏     光子
 さらに、句として目立つ作品も寄せられ、〈玉の緒集〉を賑わせた作家の作品は、
  ロボットの歩幅に合わす訪問者     美佐緒
  放たれた時間 老後という荒野    千鶴
  能面が起き出して来る鬱の朝      柳蔵
  ホシゾラを跨いできたな白い脚     ヒロユキ
  老いの背に老いを背負わせる処方箋 ゆみこ
  レントゲン骨の密度に出汁が出る   喜代子
などがあります。一歩抜け出したヨシ江さんに〈新人賞〉を受けてもらうことにより、皆様の今後の活躍を祈念いたします。

 

    「さくらき」 〈玉の緒集〉 各号推薦句

   「さくらぎ」 〈縁江集〉 一句鑑賞

         「さくらぎ」 会員作品集
           

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